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高森明勅
2010.10.28 15:14

葛藤の効用

「人間学を学ぶ月刊誌」を標榜する『致知』11月号の特集「人間を磨く」の一環で、インタビューを受けた。

テーマは「日本神話」。

2時間ほどお喋りしたのを、編集部で5頁の記事にまとめてくれた。

私のとりとめのない話を、要領よくまとめて下さっていて、感心した。

向こうがつけたタイトルは「神話が教える魂の磨き方」。

その中でも少し触れたように、大学に入学してサークルで初めて『古事記』の神話を読んだ時、物凄い違和感を覚えた。

単に馬鹿馬鹿しく荒唐無稽というだけでなく、その内容自体が近代的知性への挑戦のように感じたのだ。

この直感は、結果的には正しかったと言えよう。

だが、当時は近代的知性そのものに疑問を投げ掛ける必要があるなどとは、夢にも考えていなかった。

だから、『古事記』を読むのが苦痛で仕方がなかった。

しかし、あの時の葛藤がなかったら、私なりの神話論を構想することなど、およそ不可能だったはずだ。

いわば、予定調和的でない゛意地悪″な視線を向けたことで、逆にそれまで見逃されて来た神話の魅力や価値を、再発見出来たのかも知れない。

私の神話論については、これまでに『はじめて読む「日本の神話」』(展転社)を上梓しているほか、あちこちに断片的に書いて来た。

学術論文は3本ほど。

いずれ機会があれば、改めて書き下ろしたいと思っている。

意外に思う人がいるかも知れないが、天皇についても、似たような葛藤を経験した。

だが、そうした経験をくぐり抜けて来たことが、むしろ自信に繋がっている。

これからも、様々な知的思想的葛藤に出会いたい。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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